世界が終わる前に

残り香に嫉妬、初デートの苦味



それから二人で肩を並べて、最寄りの駅へと向かった。


学ランを着た黒斗くんと、いつもより少しお洒落をした私服姿の私は、傍から見たらどう見えるのだろう。


秋晴れの真っ青な空を見上げる振りをして、何度も黒斗くんの綺麗な横顔を盗み見る私は、やっぱり恋する乙女でしかないのだろう。


黒斗くんの風に揺れるさらさらの黒髪や、たまにお互いの体の一部が触れ合ってしまう、この距離感が堪らなく愛しい。



そして、暫くして、履き慣れないヒールのある靴の所為でいつもよりは歩き難いはずだったのに、全く違和感がなかった事にふと気がついた。


けれど、それは、隣を歩いている黒斗くんがゆっくりとした歩調で自然と、私にペースを合わせていてくれたからだ。


< 177 / 202 >

この作品をシェア

pagetop