世界が終わる前に


体調管理に気をつけろ、だなんて尤(もっと)もらしい台詞を言う癖に、こんな密閉された閉鎖空間に大人数の生徒を敷き詰めるなんて、馬鹿な話もいいとこだ。


全く迷惑極まりない。

言語道断だ。


そう思いながら、ベラベラと身振り手振りで喋り続ける定年退職間近の女校長に、念を送り続ける。


いつ、この“念”が“呪い”に変わってもおかしくない、この状況……。



それから程なく、やっと長たらしい女校長の話が終わって、この上ない開放感に安堵した瞬間――…


舞台のすぐ側に控えていたらしい教頭が、然(さ)も『待ってました!』と言わんばかりに生き生きと壇上に上がり、嬉しそうに頬を綻ばせながらまた退屈な話を始めたのだ。


マイクからスピーカーへと流れはじめた教頭の耳障りな野太い話し声が、念仏だかお経だかに聞こえはじめるのも時間の問題で。


……いよいよ貧血で倒れた振りでもしてしまおうかなんて、本気でそんな馬鹿げた事を考えはじめた時、



「…――ねえ、朝吹さん。ちょっといい?」


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