世界が終わる前に

嘘みたいな真実に目を瞑る



「逃げんてんじゃねェよ」


「……」



振り向いた私と距離を詰めながら尚も低い威圧的な声を出す黒斗くん。

不思議とやっぱり恐怖心はなくて私はただ呆然と黒斗くんを見つめていた。



「つか、俺から逃げれると思うな」


「……」



向けられる鋭い視線に息が詰まりそうになった。


でも――…



「……マジであんたといると、調子が狂う」



…――次に紡がれた言葉は思わず拍子抜けしてしまうくらい弱々しく吐き出された。



「……黒斗くん?」


「どうしようもねェんだよ」


「……」



夕暮れ時の閑静な住宅地に黒斗くんの低い声が穏やかに響く。



「どうにか出来る方法があんなら教えてくれ」


「……」



切なげに寄せられた黒斗くんの眉に深く皺が刻まれる。


黒斗くんの言葉の主旨は正直わからないけど、何だかとっても申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


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