ちぇりぃ★〜姉と弟の恋模様〜
タクシーを降り、アパートの鍵を開ける。


「果夜ー、ただい…ま」


静かな茶の間のテーブルに顔を伏せ、小さな寝息を立てている果夜。


なぁ、母さん。


オレにはできそうにないよ。


果夜を。


果夜を他の男に渡せる日なんて来やしない。


だって、こんなにも苦く、甘く、果夜を想う気持ちは。


何年もつもりつもった想いは。


“恋”なんて言葉じゃ追いつかねぇんだよ。


「果夜、風邪ひくぞ?」


「ん…。あお、と…」


寝言で呼ばれたオレの名前。


何を夢見てる?


夢の中のオレは、何を言っている?


「好きだ」と。


せめて夢の中だけでもいい、そう告げていたい。


───カシャ


ケータイのカメラに果夜の寝顔をおさめた。


小さく笑った果夜の笑顔は。


オレだけのもの。


そう念じながら。
< 271 / 343 >

この作品をシェア

pagetop