彼岸と此岸の狭間にて
10.『我思う、故に我あり』
〔1〕         

「お〜い、葵殿!」               
「お久しぶりです、山中殿!お〜っ、幸恵殿に、雪乃殿、綾野に、お子達もみなお揃いで…」

「どちらかにお出かけでしたか!?」                   
「暫らく旅に行っておりました」

「それは結構な事で…雪乃にも無事、男の子が産まれました」                
「それは愛でたい!名は何と?」

「『雪太郎』と名付けました」

「良い名ですね!じゃあ、今日はみんなで美味しい物でも食べに行きましょうか!?」         
「賛成、賛成!」          
みな幸せそうに笑いながら手に手を取って歩いて行く。                                                                                                                       
何故か、涙が止まらない。                                                                                                





「お兄ちゃん、お兄ちゃん、ってば…」                  
「何だ、綾野!?」               
「綾野〜っ!?誰、それ?…また寝呆けてる……電話だよ、電話…」                 
「う〜ん、電話!?誰?」                
「山中…光太郎とか言ってた!」

「山中…山中と…あっ、光太郎か!?」                   

日曜の午後。葵はベッドで転寝をしていたようだった。                       
直ぐ様、ベッドから飛び起き、一階リビングの電話に向かう。                    
(なんか切ない夢だった!…)
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