彼岸と此岸の狭間にて
11.『そして、彼岸と此岸の狭間にて…』
            
随分長い間寝ていたような…                       
記憶はあの電車の中で止まっている。その後がない…            
何か見ていたような気はするが、それが何だったのかは……思い出せない                        
確かに、生きて来たという意識はある。朧(おぼろ)げながら感覚もあるにはあるが、実感がない。蜃気楼の中で作り出された事象を見ているような感覚……                              
これを生きて来たと言って良いのか?                          
生きていると思えば生きているのだろうし、死んでいると思えば生きていないだけなのか!?                              
全てが意識に依存している。「生」も「死」も…夢ですら実体は意識の残物!!         

そして五感の全てが意識の中に投影されてはいる。そうすると、夢の中でも五感を感じ取る事は出来る筈…               

強く念じれば「生」は「実存」し、念じなければ無意識の中に埋没する。               
ならば、生きようという意思が大事なのではないか!?意思こそが全てではないのか!?                                
俺は生きたい!                 
いや、生きるのだ!               
もっと言うならば、生きなければならないのだ!!                         

闇の中に一筋の青白い光が見える……          

それは生へ導く光!             
そして、その光の向こうに誰かが立っている…            
それは……
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