彼岸と此岸の狭間にて
「じゃあ、お菓子買って来て!?」                    
「またお菓子かよ。でも、今日はダメだ!!」               
「何で?」                   
「…行く所があるから…」             
「まさかいやらしい店に…」                
「馬鹿!!そんなわけないだろう!?」

「だったら良いじゃん」

「ダメ!」                   

自転車にまたがり一目散にペダルを漕ぎ出す。                                             
「何よ、ケチンボーの馬鹿兄貴!!」                   
美優の声を背にすっかり闇に覆われた町中を疾走して行く。                                           



葵の住む町は人口6万程の小さな町だが、近年の地方分権制度の推進政策により多少活気づいている。                 
葵が幼い頃は周りには山と畑と空き地しかなかったが、今では同じような形の『建て売り住宅』が葵の家の周りにも建ち並ぶ。


そうは言ってもまだまだ自然がそのまま残っている場所も多い。




葵は自然が残る町外れの方に向かっていた。                                   
自転車のライトを点け左手の腕時計を見る。                
(もうすぐ7時か…確か8時までだったよな)               
葵の両足に更なる力が加わる。
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