【短編集】翳りゆく部屋 ~サビシガリヤノオンナタチ~
「分かったよ、ほらっ、早くっ」


『何よっ、偉そうに』

そう思いながら香純は、フラフラと真一の後をついて行く。


いくら不景気だと言っても、さすがに金曜日の夜。

中々、タクシーがつかまらない。


「少し、歩くぞ」


真一は、自分のペースで歩き出す。


『こんな男、どこが良いの?』

香純は、益々、理解に苦しんだ。


「もう少し、ゆっくり歩いて下さい…」

甘えた声で、香純が言う。


これで、殆どの男は、香純を気遣ってくれるはず。





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