夏の事。
タケルの家を走って飛び出したあかりは涙が止まらなくなる。


『心配、なんだよ…』


(なんでそんなに心配してくれてんのっ!?

私の事なんか、そんな風に思ってない癖に。

私の気持ちなんか、分かってくれない癖にっ!!)


それでも、抱きしめられたぬくもりを忘れられずにいた。


彼は、私にとってなんなのか。


それが心にこびり付いて離れないまま、あかりはあかりの祖父母の家へ向かおうとした。

立ち止まり


込み上げてくる嗚咽をゆっくり深呼吸をして、抑えようとする。


それでも新たな涙があかりを襲う。


「ヒッ…」

嗚咽がまた襲ってきて。


タケルと祖父母の家の中間地点の所で


あかりはへたり込んで泣いた。


涙が後から後から出て来て、どうすることも出来ない。


この世から消えたいと思った所を祖母に止められ、ここに来たけれど。


それがホントに良かったのか。


堕ちて行く事しか自分には出来ないのではないか。
それが自分の望みだった筈。

子どもを殺して、自分がのうのうと生きてる。

私は幸せになっちゃいけない。

なのに、何故タケルに抱きしめられて、少し安心したのか。


(心配なんて言葉、軽々しく言わないで…!!)


あかりはそう思ってた。
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