『霊魔伝』其の参 土の章
ベッドからでると零次朗は、祖父の武寅から渡された灰色の衣服に着替えた。

初めて着るその衣服は、まるで羽のように軽かった。

形は作務衣のようでもあったが、見たことのない生地でできていた。

「へえ、こんなの初めてだ。動きやすいし、着心地いいな」

《そうだろう。それは特殊な霊糸で編んだもの。普通の世界にはない》

「霊糸?」

聞き慣れない言葉だった。小太郎は自分の着物を指していった。

《これもそうだ。ある特殊な能力を持つ霊魔が作り出す糸のことだ。
霊糸は着ている者の霊気を癒したり、洗練したりする。
それに丈夫だ。
着ている者の霊気を少しずつ吸収し、自己補修したり、身体の成長に合わせて大きさも変わる。
一着あれば、ずっと着ていられる》

「なんかすごいものなんだな。だけどいつも同じじゃ飽きるよな」

《いや、色、形も変わる。それは着ている者の霊気力による。今の零次朗のが、最初の形。俺も最初はそうだった》

小太郎の着ているのは、剣道着のような形をしており、上半身の部分には黄色と黒の縞模様がついている。

そして剣を腰に差しているので、いかにも剣豪という感じだ。

袴のお尻の所には、穴が空いており、尻尾が出ている。
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