おしえてください、先生。
蒸気した頬に、潤んだ瞳。
理性が働かなくなるほど、魅力的だった。
その唇に、触れたくなった。
体が勝手に、そこを自分の唇で塞ごうとした。
本能に、従おうと思った。
だけど南の潤んだ瞳と目があって、なけなしの理性が、唇ではなく頬へ唇を落とさせた。
校舎の窓から覗く、あいにくの曇り空。
「……はあ」
ため息がこぼれる。
キスをしてしまったのが昨日。金曜日の今日も家庭教師はある。
どんな顔して会えばいいんだ……。しかも、今日から桜さんは出張でいない。
「はぁ……」
「なあ雄悟、聞いてる?」
「はあ」
本当、どうするかなぁ……。
「ねぇ、雄悟!」
「ん、ああ、何?」
「何、じゃないでしょ、ため息ばっかりついて」
目の前で弁当を広げて食べながら話しかけるのは山下大翔。
女装趣味があるちょっと変わったやつだけど、1番の親友だ。
今は昼休み。俺と大翔は教室で机を挟んで飯を食べている。