おしえてください、先生。

蒸気した頬に、潤んだ瞳。

理性が働かなくなるほど、魅力的だった。

その唇に、触れたくなった。

体が勝手に、そこを自分の唇で塞ごうとした。



本能に、従おうと思った。

だけど南の潤んだ瞳と目があって、なけなしの理性が、唇ではなく頬へ唇を落とさせた。








校舎の窓から覗く、あいにくの曇り空。



「……はあ」



ため息がこぼれる。

キスをしてしまったのが昨日。金曜日の今日も家庭教師はある。

どんな顔して会えばいいんだ……。しかも、今日から桜さんは出張でいない。



「はぁ……」

「なあ雄悟、聞いてる?」

「はあ」



本当、どうするかなぁ……。



「ねぇ、雄悟!」

「ん、ああ、何?」

「何、じゃないでしょ、ため息ばっかりついて」



目の前で弁当を広げて食べながら話しかけるのは山下大翔(やましたひろと)

女装趣味があるちょっと変わったやつだけど、1番の親友だ。

今は昼休み。俺と大翔は教室で机を挟んで飯を食べている。
< 35 / 154 >

この作品をシェア

pagetop