おしえてください、先生。

雄悟先生はどうして、キスしたんだろう……。

先生は私よりはるかに大人だし、たいした意味なんてないのかな。

昨日もすぐに帰っちゃったし……。



小さくため息をつく。

今日、どんな顔で雄悟先生に会えば良いんだろう……。








電車からバスに乗り換え、家の最寄りバス停で降りる。

痴漢対策でバスを一本遅らせたから、だいぶん暗くなってしまった。

雷はまだ鳴っていないけれど、雨脚は強まって、今にも雷が鳴りそうな灰色の雲が空いっぱいに広がっている。



雄悟先生ももう来てるかも……急がなきゃ。

バシャバシャと足音を立てながら、マンションへと小走りで向かう。



マンションが見えてきて、ホッと胸をなで下ろす。

良かった……雷、鳴らなかった――。



――ピカッ



目の前が一瞬、真っ白になる。

身体はスイッチが切れたように固まって立ちすくむ。

う、うそ……もう、目の前なのに。目の前にマンションがあるのに……。

せめて、家に入ってから鳴ってくれれば……。

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