この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
あの時――…


客が何人いたかなんて数える暇すらなかったけれど


だけどあの時


俺は確かに全ての注文を聞いていた。





「え…山吹……俺…」














―――そんな時だった




「あ――…!やっと見つけた!お前らここにいたのかよ!」


狭い店内にいきなり響く声。


驚いた全員がその声の方を見ると


カウンターごしに店内を覗く、ヒゲ男の姿があった。


ヒゲ男は長時間歩き回っていたのか大量の汗をかいていた。


「はぁ…はぁ、いきなり居なくなるから心配したんだよ」


ヒゲ男はカウンターに腕をつくと深く息を吐くように頭を下げた。


「夏美はともかく…美代ちゃんやメイは変な男に連れていかれたのかと…」


「はぁ!?それどういう意味よ」


ヒゲ男の言葉に


すかさず夏美が拳をあげながらガタッと立ち上がる。


「どうもこうも…そのままの意味だけど」


ヒゲ男は立ち上がった夏美の全身を、品定めするように上から下までゆっくりと見た。


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