この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「米は酢飯か…」


初めて食べる生魚は想像よりもずっと旨かった。


ヒゲ男はそんな俺の反応をまじまじと見ている。


そんなに見られると食いにくい…。


俺は指についた米粒をぺろりと舐めた。


「ん…旨いよ」


最後にわさびのほのかな薫りがツンと鼻に抜ける。


「たまごも美味ひぃ~よ~」


美代も頬をぱんぱんに膨らませてヒゲ男に微笑んだ。


ヒゲ男は俺たちの反応にホッとしたように顔を緩ませる。


「まじか…!どんどん握るから遠慮なく言ってくれよ!」


「わ~い、じゃあ私、次はサーモンが食べたいです☆」


「俺も…美代と同じやつで」


「アキラ~私も食べていいのぉ?」


「おぉ!もちろん夏美も食えよ?お前は何にする?」


「じゃあ私ウニとアワビ」


「おま…今日の代金は俺の小遣いから引かれるんだけど…」



< 265 / 513 >

この作品をシェア

pagetop