この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
―――5年後




バタバタバタバタ

「わ~ん!時間ないよ~」



イラ……


「あれ~?あれもない~」




イライラ……


「うあ~!あれもない~」




イライライラ……


「よし…っ、お待たせ!」





『っせぇ――――よ美代!!』




――ガブッ!!


「ひゃあぁあっ痛ぁい!マサルさんなんで噛むのぉ!?」



ったく、本当に美代は……






おっと…失礼。

俺の名前は田中マサル。



見ての通りウサギだ。





「あ、財布忘れた!」


『お前…それ一番大事だろ!』



そしてさっきからバタバタと走り回るこの女は

田中美代。



この春から女子大生の俺の飼い主だ。




美代はトロくて鈍い。


大学の近くで一人暮らしを始める美代は引っ越し当日になってバタバタしていやがる。



今からあのポンコツ車を飛ばして電車に間に合うのか?


ここはド田舎。

電車は2時間に1本だ。



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