先見の巫女


「見つけた………」


そのまま力強い腕に引き寄せられる。


何が起こったのかわけが分からず顔を上げると…


「…朱…………」


綺麗な朱い髪…
朱い瞳……


これを…あたしは何処かで見た事がある。


とても近くで…
でも遠くで………


「雛菊っ…もう…会えないかと思ったんだぞ…」


今にも泣きそうな彼の名前が出てこない。


誰よりも愛し誰よりも守りたいと願った人だったはずなのに…


「…どうして……
あたしはあなたを知ってるのに……」


ただ好きという感情だけが残されて、それがこの人に向けられている…
それは分かるのに……






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