先見の巫女
「神子様…」
心配そうな顔をする翠の姿があった。
姿の事だ、真剣な表情をした翡翠龍に呼ばれた私を心配してついて来たのだろう。
「…………翠…」
翠は申し訳なさそうにあたしを見て頭を下げる。
「無礼を承知で…
あなた様について来てしまった事、お詫びします」
本当に申し訳なさそうに悲しい顔をするものだから、私は少し笑ってしまう。
そんな羽優を翠は驚いた顔で見つめていた。
怒られるとは思っていたが笑われるとは…とそんな顔で…
「本当…優秀な護り手ね」
主を護る為ならどんな掟も命令も聞き入れず自分の意思で自分の正しいと思った方法で主を護る。
「あなたになら……
本当に人の世を護っていけるわね」
ただ運命、命令、使命に従うだけでは京は護れない。
この何千年という歴史をもつ神と人の世と世界は京と名付けられ今この瞬間まで存在してきた。
この京が崩壊するのにはそう時間がかからない。
だが復興には長い時間がかかるだろう…
「あなたの魂ほど美しく強く気高いモノは無いわ」
それだけ言って翡翠龍に背中を向ける。
「翡翠龍…少し…時間を。整理させて…」
裏切った黒闇龍に心を砕く事は許されないし愚かな事だとは思う。
でも……
「あれでも…家族よ…」
小さく呟いた声が翡翠龍にまで届いたかは分からない。
けれど、少なくとも…
翠の耳には届いていた。
悲しげに呟く羽優の横顔を翠は心配そうに見つめていた。