LOVE SONG
無心に池の回りの草むしりをしていた中里はふいに誰かの足が視野に入って来て、顔を上げた。

「あ…、成田さん…」

中里は、なぜ目の前に成田が立っているかわからず、驚いて立ち上がった。

「な、何やってるんですか?」

「それはこっちのセリフだ」

「え?」

「お前、何こんなとこで草むしりしてんだよっ」

突然現れてキツイ口調の成田に中里はムッとして答えた。

「…草むしりしたい気分だったんです。いけませんかっ」

「お前なぁ、失恋したかなんだか知らねぇけど、俺らと仕事するんだったら、そういう部分ひきずらねぇでくれよな」

中里は完全にカチンときた。

「…なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよっ。今は仕事中じゃないでしょっ。あたしが何しようとあたしの勝手じゃないのっ。仕事中にひきずったりしないわよっ!」

「よく言うぜ。今日、俺らと会った時だって、思いっきりひきずってたじゃねぇか」

「っ!そんなことないわよっ」

「失恋の一つや二つで仕事が出来なくなるなんて、お前、プロ意識が足りねーんだよっ」

「あんたに何がわかるってのよっ!!最初っからプロ意識なんて、ありゃしないわよっ!!あたしが気に入らなきゃ、他の人にしなさいよっ!」

中里はそう言い捨てて立ち去ろうとしたが、成田が腕を掴んで止めた。

「待てよっ。なんだよ、その言い方はっ!さっき精一杯書くって言ってた、ありゃ嘘かよっ」

「あたしはねぇっ、あんたたちに詞を書く為に作詞家になったんじゃないわっ。結婚して、家庭に入っても、家の事や子供の世話しながら、続けていける仕事をと思って、会社辞めて、作詞家になって、結婚する準備してたんじゃない…。それなのに、やっと、仕事が決まった事が…。あんたなんかに、あたしの気持ちなんかわかんないわよぉ…」

中里は最後は半ベソ状態になってしまった。
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