一人こっくりさん
第九章 過去
 一年前……。

「おはよう知依〜」

『おはようお兄ちゃん。遅刻だよ』

 知依は時計を指差して言った。

「そだねぇ」

『……呆れた』

 知依は、呆れた顔をしながらランドセルを担いだ。

「あれ、もう行くの?」

 僕はゆっくりと朝食を食べる。

『“もう”って……普通だよ。お兄ちゃんが遅いだけ』

 そう言って知依は玄関に行こうとした。

『先行くよ』

「えぇっ……いってらっしゃい……」

 どっちが年上なんだか分からない。
 僕はこの3分後にやっと朝食を食べ終わった。

「さて、行くかぁ〜」

 僕は立ち上がり、リュックを担いだ。


 プルルルル……。
 その時電話が鳴った。

「何だよぉ、いい時なのに……」

 別に何もいい時ではなかったけどそう呟いた。

「もしもしぃー」

 電話をとった。

『宮下知依さんのご家族の方ですか?こちら西署の……』

 知依…………?

「え――?」


 僕は学校を休んで西署まで行った。
 そこには既に両親が居て、二人とも泣いていた。

 知依に会った。
 知依は眠っていた。

「知依……遅刻だよ、起きて……」

 知依は起きない。

 知依……
 もう二度と、この瞳は開かないの?
 知依……!

 僕の目からは涙がとめどなく流れていた。
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