一人こっくりさん
第三章 実行
「こっくりさん、こっくりさん。おいでになりましたら北の窓からお入り下さい。」

 もう一度繰り返した。が……

「何も起こらないな」

 まぁ呼んだだけで何か起こるわけないか……。


 ガラガラ……


「!?!?」


 俺は咄嗟に音のした方を見た。

 北の窓だ。

 少ししか開いていなかった窓が、全開になっている。

「なんで……」

 何かが窓を開けたのか?


 “何 か”が


 ビュオッ……

 その時、突風が吹いた。
 線香が消えた。

 霊感など微塵もない俺でも分かった。
駿のようなオカルト好きじゃない俺でも分かった。

 “何か”が来た。

 もう後戻りは出来ない。

 駿も今頃、こんな状況なのだろうか。

 カーソルを鳥居に合わせたまま、駿に電話した。

『もっしー! 優だよね?』

 ああ、テンションが高い。

「ああ、もうやってるか?」

『うん! 今いろいろ質問してるよ〜』

 何、もうそこまで行ったのか!?

「……そうか、この電話繋げたままにしてくれないか」

 駿の声が聞こえれば、(こんな奴でも)多少は心強い。

『?、いいよー! 実況しあうんだね!』

「さんきゅ、じゃあ俺まだ呼んだだけだから」

『そうなの〜? 早く追い付いてねー』

 ガチャ、と駿が携帯を机に置いた音が聞こえた。
 俺も電話を繋げたまま携帯を机に置いた。

「こっくりさん、こっくりさん。いらっしゃいましたら【はい】の所へお進み下さい。」
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