ショコラ~恋なんてあり得ない~
「ホラ、まずほっぺを拭いて」
「うん」
情けない顔をしている彼に、自分の分のアイスを差し出した。
「あたし、もうお腹一杯」
「え? でも」
「あたしを太らす気? いいから食べて!」
彼はキョトンとした顔をくしゃりと崩す。
「……ありがとう。詩子さん」
渡す時に触れる手に、心臓がドキンと跳ねる。
「か、片付けないと、鳥とかが食べに来ちゃうわよ」
その動揺を覚られないようにすぐに俯いて、コンビニの袋にアイスをいれて、口を縛った。
参ったわ。
中々動悸がおさまらない。
強い視線を感じて顔をあげると、宗司さんが申し訳なさそうにこっちを見てる。
早くアイス食べなさいよ。
今度はそっちが溶けるわよ?
そう思ったけど、宗司さんが気にしてるんだろうなってのはわかったから。