ショコラ~恋なんてあり得ない~
「仕事終わったら話せない?
ここじゃ、隆二くんが気になるから別の店で。夕食一緒に食べましょ?」
「いいわよ。後三十分くらいだから、待ってて?」
「ここじゃ何だから駅で待ってるわ。終わったら電話して? ごちそうさま。とってもおいしかった」
「うん」
会計をして母さんは店を出ていく。
後姿だけ見ると、二十代のOLって感じ。
あたしより若く見えてそうで恐ろしい。
「帰ったのか?」
その声に振り向くと、親父がこっそりと厨房から覗いている。
「見てたの?」
「なんて言ってた?」
「イヤ大した話はしてないわ? でも、夕飯食べる約束したから」
「そうか……」
親父は顎に手を乗せて、一瞬考えるような仕草をした。
「帰りは気をつけるんだぞ。遅くなるようなら電話しろ」
「平気よ。あたしに護身術を身につけさせたのは親父でしょうが」
つれなく返すと目が潤む。
ああんもう、面倒くさい人だわ、ホント。
「たまには迎えに行きたいんだ」
「……気が向いたらね」
今日の親父はなんか変。
それは突然やってきた母さんとの間になんかあったからなのかも知れない。