ショコラ~恋なんてあり得ない~
けれど、夢見る親父はどうしてもその夢を捨てれなかったらしい。
泣く泣く離婚届にサインをして、あたしとも母さんともそこでお別れするはずだった。

なのに。


『詩子ぉ。お前まで行ってしまったらお父さんは何を目的に頑張ればいいのか分からないぃぃぃぃ。お前に苦労はさせないから、頼むから俺のところに残ってくれえぇぇぇ』


間際にきてのその大泣き。
鼻水も垂らしてたな、確か。

あたしも母さんも顔を見合わせて、情けなさを感じつつほだされてしまった。
もともと、あたしたちは姉御肌なのよ。泣きつかれると弱い。
そんな訳で、あたしはここに残ることになったのだけど。

……今思えば、ぶん殴っててもすがってくる手を離せばよかった。
でなきゃこんな喫茶店で、似合わないウェイトレスをやる羽目にはならなかったはずだ。


< 3 / 303 >

この作品をシェア

pagetop