ショコラ~恋なんてあり得ない~
負けん気で自分を奮い立たせて店の扉を開ける。
「おはようございまーす」
「あれ、今日詩子遅かったな」
「俺のカレーを食べないからだ」
今日はマサの方が先に来ている。
当たり前か、あたしがいつもより三十分くらい遅いんだもん。
「今日は二日酔いだから静かにしてよ」
そう言い放ち、開店準備に精を出すあたし。
とはいえ、やっぱりなんかすっきりしない。
頭もボーっとするし。
今日は注文覚えられるかな。ちょっと自信ないな。
「詩子、ちょっとこれ試飲してみろ」
「え?」
厨房から親父が手招きする。
大きな冷蔵庫の中から取り出したのは、レモンが数切れ浮かんだ冷水ポット。
そこからグラスに注がれた液体は、一見ただの水だ。