ショコラ~恋なんてあり得ない~
親父も立ち上がると、注文を聞きにカウンターの方へ行こうとする。
しかし、それより先にマサが厨房に顔を見せた。
「詩子。お客さん」
「何よ。今休憩中だからアンタが注文聞いて」
「お前に話があるんだって」
「え?」
話があるって。
あたしにそんな事言う人、今の時点では一人しか思い当たらない。
宗司さんが来たの?
しかもあたしを呼んでる?
パン粥をそこで切り上げて、口元を拭いてカウンターに出る。
不愉快そうな親父の視線が痛い。
だけど、表に出て彼の顔を見た途端、あたしの心臓は変な動きをした。
「やあ、詩子さん。具合大丈夫?」
あなた昨日、あたしの醜態見たんじゃないの?
どうしてそんな、いつもと変わらない顔でのほほんと笑うのよ。
ぎゅーっと詰まった心臓が、今度は激しく鳴り響く。