ショコラ~恋なんてあり得ない~
今日は程々の人の入り。
窓際の二人組はカップルかな。
お皿は空になってるけど楽しく話をしてるから、敢えて下げにはいかない。
喫茶店はゆったりするところだもんね。
「おいしいなぁ」
耳に届く、幸せそうな宗司さんの声。
それだけで、あたしまで幸せな気分になる。
……なんか重症だ。
何なの今の乙女チックな思考。
あたしはもっとドライなキャラのはずなのに、すっかり宗司さんののほほんワールドにはまりきってる。
この人の声がする場所がすごく居心地いいなんて、そんな赤面もんのことを考える柄じゃないのに。
気がつけばそんな風に思ってる。
どうしてくれる。
何だかものすごく悔しいわ。
八つ当たりをしたいけど、虐めてすぐ帰られるのも嫌だから。
「冷めたから交換してあげる。内緒よ?」
「え? いいよ。冷めても美味しいし」
「いいから」
ものすごくアツアツのコーヒーを入れて、彼の時間をここに縛り付ける。
「あつつ」
「ゆっくり飲みなさいよ」
困ったようなそんな顔で笑う。
見てるだけで胸がきゅっとなる。
あたし、恋をしてしまったんだ。