ショコラ~恋なんてあり得ない~

「野菜もとらないとなぁ。野菜ラーメンかな。でも折角とんこつの店だからスープを味わうのがいいか……」


呟きながら、表情がくるくる変わる。

いつもなら苛々するけど、今日は何だか許せそう。
だって、待っていた間の五分に比べたら、こんな五分は結構楽しいもの。


「とんこつラーメンと、おにぎりのセットにしよう」

「丁度席も空きそうよ、宗司さん」


カウンター席のサラリーマンが立ちあがる。
丁度二人だからあそこに入れそう。

店員さんに呼ばれて、カウンター席についた。

あたしが早々に注文を伝えていると、宗司さんがこっそりとメニューの飲み物を指差す。


「今日は飲まなくていいの?」

「今日はいいわ。またあんな醜態見せるの嫌だもの」

「醜態じゃないよ。楽しかったよ」

「……吐いたのよ? 醜態に決まってるじゃない」

「酔ったら皆あんなもんだよ。飲みすぎるほど楽しんでくれたって事でしょ?」

「うっ……」


なんてポジティブな。
悩む割には良い方に考えるのね。


< 99 / 303 >

この作品をシェア

pagetop