そら。―HAPPY STORY―
幸いにも、俺と夏美は違うクラスだった。
玲との間で何かあっても、彼女の目には入らない。
「―――よ。香」
…なんだ?
「おいおい。忘れた、って顔してるな? 俺だよ俺」
俺、って…誰だっけ?
「まじかよ。本当に忘れたのかよー」
だって俺は知らない。
恐らく元からだろう赤髪と、優しい瞳に、こちらを親しく見つめる美顔。
…赤い、髪?
「そうだよ。赤い髪。よくイジメられたろ?―――お前は、ずっと俺の友達だったけどな」
「…駒、原(こまはら)…」
目の前で笑う赤髪の男は、
確かに俺の知る人間だった。
駒原。
俺の、かつての友人だった。