ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「王を継げだの、いきなり言われても困る! 
俺は魔界がどんな所かもまだ分かっていないんだ!」


王に向かって尊敬語を使わないレオに対しては諌(いさ)める者がいてもおかしくないのだが、王位を継ぎたくないと言っているレオの意見にみなが賛成だったので、むしろ「もっと言え」とレオを後押しするような雰囲気となった。


「今は混乱しているのだ。
何もすぐに王になるわけではない。魔界に慣れながら心を決めていけばいい」


「殿下っ!」


悲鳴のような声が臣下たちから零れる。


しかしラシードはその声を全て想定していたようで、にこやかな笑顔を崩さない。


「慌てるでない。余はそんな簡単に死ぬつもりはないぞ。
それに余に子供ができればその子も王位継承者となる。
ただ可能性を示唆しているだけだ」


その言葉に臣下たちはほっと胸を撫で下ろした。


そして自分の娘を王の妃にしようと企んでいる臣下たちは、こっそり微笑んだ。


「堅苦しい挨拶はここまでだ。余はレオと二人だけで話がある。
みな下がれ」


王の命令で、臣下たちはぞろぞろと王座の間から出て行った。


バドも行ってしまったので、レオは少しだけ不安になった。


そして全員が出て行ったことを確認して、ラシードは玉座から降りて首をコキコキと鳴らした。
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