ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
冷たい外気が入り込み、下駄箱前で自分の靴を取っていた茜は身を縮ませた。


静まり返った学校の正面玄関。


茜の他にはまだ誰もいない。


「茜」


名前を呼ばれて、勢いよく振り返った。


以前レオに呼び捨てで呼ばれたことが頭をよぎったからだ。


しかし、そこにいたのはレオではなかった。


勝手に期待しておいて失礼な話だが、少し肩を落とす。


「秀平君……」


「ちょっと、いいかな?」


茜はレオから假屋崎には近付くなと言われていたのを思い出した。


「ごめん…今日じゃなきゃダメ?」


「何か用事あるの?」


「えっ……」


一瞬言葉に詰まったのを假屋崎は見逃さなかった。


瞳が鋭く光る。


「おいで」


有無を言わさない力強い物腰。


假屋崎の瞳を見ていると頭の芯が痺れてきて、目がうつろになっていた。


「来るんだ」


假屋崎が歩き出すと、自然と足が動きその後について行った。
< 309 / 370 >

この作品をシェア

pagetop