ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「なんかこの部屋、匂わないか?」


怜央の言葉に、皆が鼻を鳴らせて、辺りを嗅ぐ。


「何の匂いもしないよ?」


茜の言葉にうんうんと頷く二人。


……何の匂いもしない?


そんなわけがない。


この部屋を開けた時から匂っていた、むせ返るような甘い匂い。


その匂いはどんどん強くなっていく。


最初はむっとするような不快な匂いだった。


けれど、慣れてくるとだんだん鼻が溶けるような甘い匂いへと変わっていく。


口に出したことで、その匂いはどんどん強くなり、怜央の胸をかき乱す。


脳が溶けてしまいそうだった。
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