ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
学校を出て、家路の帰り道を燕尾服を着た男と歩く。


その風貌はやはり特殊で、道行く人は不思議そうにバドに目線を配っていた。


会話は何もない。


聞きたいことが余りにも多くありすぎて、そして現実を直視するのが怖かった。


さっき起こった出来事の全てが、夢であったならいいのに。



そう強く願うほど、様々な疑問が、言葉に発せられる前に怜央の意思によって消えていく。


そしてまたバドも、そんな怜央の気持ちを汲み取ってか何も喋らない。

バドは迷うことなく怜央の家の前に着くと、立ち止った。


「それでは、わたくしはこれで」


慇懃(いんぎん)に礼をする。


礼央の家を知っていることに、驚かなかった。


もう何があっても驚かないだろう。


そう思った次の瞬間、玄関から出てきた母親の言葉に礼央は腰を抜かすほど驚いた。

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