【短】恋ごころ
Round1

「ねぇ…タクヤ?」


さっきまで身体を重ねてたあたしはベッドから抜け出し床に無雑作に置かれている制服を身にまとう。


「何?」


あたしの呼ぶ声にタクヤはベッドの上で咥えていたタバコを離し灰皿に灰を落とす。


「あのさ、あたしと寝る理由って何?」


ふと問い掛けた言葉にタクヤは一瞬あたしを見て“は?”と言う顔つきをする。だけどすぐに視線を逸らしてもう一度タバコを咥えた。


「何って明日美から誘ってんだろ」


タバコを咥えたままタクヤはめんどくさそうに呟く。


…だよね。

わかってるよ、そんな事。

やっぱ聞いても返ってくる言葉は毎回同じ。


別にいいんだ。好きとかの感情がなくても、あたしはタクヤと寝たい。


と、言うかタクヤが好きだから。


「そうだね…」


そう小さく呟いた言葉も毎回同じ。

タクヤにはあたしと寝るって言う感情なんて全くないんだから。

あたしの事なんて何も思ってない。


だけど、それが辛い。

あたしじゃなくて他に目がいってるって事が正直辛いんだよ。

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