実録 『大喰い女VS私』
決着
「マーボー丼、大盛り。」

まあ、大盛りといってもしれている。
値段が少し高いだけだから、量的には牛丼の並と大盛りの違いくらいだろう。

でも、牛丼て器が変わるだけで、中身があんまり増えていないような気がするのは、私だけでしょうか?

「はい、マーボー丼大盛り、お待たせしました。」
「け、結構山盛りじゃない。」

普段なら、この店盛りが良いね等と店員さんに話しかけたりするのだが、今日はそんな余裕はない。

この後に坦々麺、大盛りライスと待っているのだから。

一口食べたら、程良い辛さで美味しい。

でも、少し水溶き片栗粉が少ないせいか、ゆるいな。

そんな味わっている場合じゃない。
どんどん食わなくては。

彼女は半分食べたときに、坦々麺を注文した。

私も、半分ぐらい食べ終わったとき、前回彼女がため息をついたように
「はぁー。」
と、思わず出てしまった。

今思うと彼女は、
「これじゃ足りないわね。何か追加で頼もうかしら。でも食費がまた掛かるわ。」
などと考えていたのではないだろうか。

「でも、坦々麺を食べよう。」
という結論を出したに違いない。

だが、私のついたため息は意味が違った。

「食い切れねぇ。」
のため息だった。

ここのマーボー丼、豆腐をやたら使っている。
それだけで腹がふくれる。

しかし、ここで諦めては男がすたる。

「すいません、た、た、」

坦々麺という言葉がでてこない。

自己防衛本能だろうか。
身体が坦々麺を拒否している。

「た、た、玉子スープ、ください。」

思ってもいない玉子スープを注文してしまった。
でも玉子スープなら、具も少ないし・・・。

「お客さん、すみませんね。玉子スープ無いんですよ。」
「そうですか。じゃあ良いです。」

言葉を失い、自分の無力感に打ちひしがれて、マーボー丼だけは、食べきろう。

それがせめてもの意地だ。

未熟な私が、無理な挑戦をしようとしたのが間違いだった。


やはり、お姉さん。

あんたにゃ、かなわねぇ。

2006年10月22日 午後1時47分 リタイヤ
江東区 某駅近く 大衆中華料理屋
(お店に迷惑が掛かるといけないので、伏せときます。)
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