当たらない天気予報
私だって、

「うわ、見てよあの子!パンツ入るの?」

「ちょっと!聞こえちゃうって!」


もう既に聞こえてますけど?
レジ前の女子高生二人組(制服からしてM高だ。馬鹿の吹き溜まりで有名な)が自分のことを言っているんだろうなというのはすぐに分かった。
二人とも、華奢で女の子らしい可愛い子。大概の男の子はああいう子が好きなんだと思う。
だけど頭が空っぽそう。だからきっと、頭の悪い男しか寄って来ないんだ。
そんなことを心中自分に言い聞かせながら、私は手にしたショートパンツを棚に戻さない。
濃紺のデニム地のそれは、裾が切りっぱなしになってて、とっても可愛い。
雑誌に載ってたものによく似てるけど、雑誌に載ってたものより安い。
…折角3kg痩せたんだもん。大丈夫、着こなせる!
私は辺りを見回し、一番声をかけやすそうな店員さんを探した。


「すみません、試着してもいいですか?」









生まれて初めて彼氏ができた。
相手は同じ放送部で、後輩の晋(しん)。
向こうから「真澄(ますみ)先輩、付き合って下さい!」と言われた時は本当に何事かと思った。
晋のことは全く眼中になかったし、そもそも、晋はあまり部活に来ない幽霊部員だから、殆ど会話したことが無かったと思う。
私が生徒会長の笹谷先輩に憧れていて、周りが見えていなかったせいもあるけど。
(尤も、笹谷先輩のファンは多過ぎるから、高嶺の花でしかないんだけどさ)
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