当たらない天気予報
明日も青空
いつからか、夏休みなんてもんは雲って褪せて霞んじゃった。







「慎吾…おうち帰りたい…」


俺の肩にもたれた晴香が、涙目うるうるさせて俺の目を覗き込んだ。
ちなみにこの涙目は作りモノ。この涙目に過去に2回騙されてるので、流石に学習します。


「俺だって帰りたいっつの」


敢えて突き放すような言い方をすれば、晴香は「だよねー!」って俺から離れて膨れっ面。
俺にそんな顔されても困る。
晴香が頭を乗せてた右肩が軽くなった。


「なーにが悲しくて夏休みまで学校来なきゃなんないの。消滅しちゃえ夏期講習!」

「晴香、パンツ見えそうだから脚閉じて」


大胆にぽーんと投げ出された晴香の白い細い脚は、日焼けを知らない。
夏休みだっていうのに毎日学校と家を往復して、冷房の下でかりかりと勉強を強いられてるせい。
まあ俺の腕だって見事なまでに真っ白ですが。
マジで消滅してくれ夏期講習!これじゃ普通の授業と変わんねーって!
それもこれも、全ては進学校とか言われてるこんな学校に来てしまったが故の哀しい運命。
そんな運命なんて知るか!と、晴香と二人で仲良く4限目をエスケープ。
屋上はぽかぽか気持ちいい。
うそ。馬鹿みたいにあっちぃ。
でもこうして日影に入っちゃえば涼しくて、昼寝さえできそう。


「あたし海行きたいよ、海」


俺の言うことなんて耳を貸さず、やっぱり脚を行儀悪く伸ばしたまま晴香が溜め息をひとつ。
俺の前だけしかしないカッコだと思えば、…うん、今日だけは大目に見よう。
< 4 / 42 >

この作品をシェア

pagetop