当たらない天気予報
空を仰げば
たかだか4階からなのに、見下ろした地上は意外にも遠くて、軽い眩暈がした。
青い青い空が近くて、でも底が無いみたいに果てない。





「亜子(あこ)、おっこちちゃうからこっち来なよ」


屋上と空の境目に腰掛けて足をふらふら揺らしてたら、フェンスにもたれてる相馬(そうま)に注意された。


「落ちないもん。落ちるとしても、落ちる前に相馬の手ぇ引いて相馬を先に落としてやる」


ちょっと首を捻って相馬と目を合わせれば、相馬は目を細めて笑う。
あ、この顔好き。
なんかこういう顔してる時は、相馬が優しい時。もしくは何かを企んでる時なんだけど。
その見極めは非常に困難。


「その前に俺が亜子を引き上げちゃうし」


学校の屋上に、二人。二人でフェンスを越えて、なんか二人で禁忌を犯してるみたい。平和過ぎる午後の空の下での日向ぼっこ。


「…けど、いっそ落ちた方がラクかなあ…」


思えば、ちっぽけな世界など未練は無い。不確かな未来なんて要らない。ならばいっそこのまま相馬とジ・エンドもアリだと思う。
時間を全部止めて、存在するは過去だけ。
…なんだろ、今日はえらい思考が捗るなぁ。


「亜子、病んでんの?自殺願望っぽい」

「…ん、急に色々面倒臭くなった」


けらけら、冗談ぽく笑う相馬の声さえうわの空。
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