期間限定、恋人ごっこ

でも、明日で別れるのに?
明日別れても、井口はこのシャーペンを使ってくれる?
――使ってくれているのを見て、私は冷静でいられる?

8時ちょっと前まで考えて、結局、シャーペンの包みは引き出しの中にしまった。
待ち合わせは午後1時だし、それまでに別のプレゼントを用意すればいい。そうだ、消耗品なんかがいいんじゃないかな、タオルとか、何かそういう……

いくつあっても困らないもの。
シンプルで、記憶にあまり残らないようなものを。

そこに行きついて、ちょっとさみしくなった。
胸の奥がじんじんしたけど、気付かないふりをした。

今日は、井口の誕生日。
にこにこ笑って、楽しく、過ごそう。

それが、一週間私に付き合ってくれた井口への、せめてものお礼。


< 39 / 39 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

【短編集】七ツ丘中 百物語
伊倉/著

総文字数/5,811

ホラー・オカルト15ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop