。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


「まったく。お前はすぐにどこか行くんだから」


叔父貴はあたしの手を引きながら、呆れたような…でもちょっと口元に微笑を浮かべてあたしを見下ろしてきた。


怒ってはいなさそうだった。


叔父貴……


こないだも、やっぱりあたしたちは酷い別れ方をしたってのに、いつも通り…


「何で叔父貴が?仕事は?忙しいんじゃなかったの?」


疑問に思ったことを口にすると、叔父貴は切なそうに瞳を揺らした。


黒曜石のような瞳の奥で、何かがゆらりとゆらめきドキリとした。




「あいつに頼まれたんだよ。お前と会ってくれって。仕事は適当に切り上げた」




“あいつ”ってのは聞かなくても分かる。




戒―――どうして……




何で戒から頼まれたのか、どうしてあいつがあたしに会おうとしないのか、聞きたいことはいっぱいあったけど、あたしは聞くことができなかった。


「花火、見るんだろ?それなら青龍会本部で見よう。あそこならゆっくり見える」


「あ…でも、リコも居るんだ。キョウスケも」


「キョウスケにはあいつから事情を話してもらって、川上さんには二人で見てもらうよう言ってあるから、大丈夫だ。


会場にはマサたちも居るし、中尾組の連中はさっきの騒ぎで大人しくしてる」


そう言われて、あたしは素直に頷いた。


叔父貴はちょっと困ったような呆れたような顔で、こめかみのあたりを指で掻くと、


「中尾組が暴れてたあの屋台の土地な……


あそこは中尾組のシマだ」


なんて言いにくそうにあたしを見下ろした。


え゛!






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