青い春と風の中で
「――ふは。先生、顔が真っ赤だよ」

「――きょ…教師をからかわないでッッ」


驚いて落としてしまった日誌を拾い上げて、慌てて職員室へと向かおうと足を進めると、突然腕を掴まれて後ろによろけた。


「な、何するのよ……」

「…せんせぇ、コレ要らないの?」

笹川がヒラヒラと揺らしながら見せつけたのは、葵が髪の毛を留める為に付けていたクチバシだった。

「――か、返しなさいッッ」

手を伸ばして奪い返そうとしたが、笹川はヒョイと軽々と腕を伸ばしてクチバシを遠ざけた。

「……やだね」

まるで楽しい悪戯を思いついたように、顔をニヤつかせる。

「…笹川君、返してよ」

必死に腕を伸ばしが、やはり届かない。



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