好きな人はスカウトマン。
「彼には、携帯見ちゃった事、言ったの?」


「言ってないよ~! 悪い事だもん。だけど~、彼は気付いてたと思う」


「え!」


「彼が浴室から戻ってきた時、あわてて置いたからね~、携帯の位置がね、元あった場所と違う場所に置いちゃったの」


「そっか、それで……」


「彼、携帯を眺めながら、ちょっとため息ついてた。だから~、たぶん気付いてたんだと思う。『携帯見ただろ!』とか言われたほうがまだマシだったな~。何も言わずに、掛けておいたスーツのポケットにしまったの。あたし、ますます自己嫌悪に陥ったよ~」


由佳は今明るく話しているけど、きっとすごくツラかったんだろうと思う。


「だからね~、携帯チェックはしちゃダメなんだ~。見ても見られても、やましい事があってもなくっても、絶対に嫌な気持ちになるんだから~」


すごく説得力のある話だった。


「あ、もう1時ぢゃん~! 次の授業の教室ドコだっけ!?」


あたし達はまだ大学生だけど、やっぱり高校生よりは断然大人だと思った。
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