好きな人はスカウトマン。
きっと寝ぼけて切ってしまったんだろう。
またかけ直してくるだろう。


そう思って、あたしは特に深く考えなかった。



でも、3日が過ぎ、1週間が過ぎても、由佳から電話が折り返しかかってくる事はなかった。



「ねぇ、由佳って最近学校に来てる?」

いつも一緒に授業を受けていて、由佳とも共通の友達である尚子が、心配そうな顔で聞いてきた。

尚子は、由佳みたいなギャルではなく、ショートカットでサバサバした、気持ちのいい女の子。
女の子独特のネチネチした感じがなくて、あたしはそんな性格が大好き。


「ううん。なんか毎朝寝坊してるみたいで……」

「寝坊って……。もうすぐテストなのに、どうしちゃったんだろうね」


尚子は、由佳が夜の仕事をしていることは知らない。

寝坊といっても不思議がるのも仕方がない。

尚子とも話し、その夜、また電話してみる事にした。
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