AKIRA



「そう言えば、お前、意外に軽かったな」

「は?」

「ちゃんと食ってる?」

 そう言って笑いながら陽の顔が俺に近づく。

 近い近い、マジ近すぎる。

「く、食ってるよ! ってか、みんなで抱えてきたんだろ?」

「いや、俺一人」

「は、どうやっ……」

「勿論、御姫様抱っこで」

 思わず仰け反って、俺の背中が壁に当たる。

 あまりにもニヤニヤしてる。絶対にからかってるぞ、こいつ、からか……っ!

「な、なんだ、ですか?」

 陽が、俺の額に、そっと掌を宛がってきた。ヤバイ、心臓が止まっちまう。

「熱あんのか? お前、顔、赤いぞ」

 誰のせいだぁ――――っ!

「ね、ね、ね、熱なんかねぇ、ない、ですわよ」

「ぷっ」

 ぷって、ぷって……笑いやがった。

「今時、ですわよ、って」

 あ、腹抱えて笑い堪えてやがる。

 うわ、マジ俺、死んじまいそうだ。

 つうか、死にたい。

「マジ腹痛ぇ、ってかお前、面白すぎ」

「わ、笑いたきゃわらえよ」

 思わず小声で、いつもの言葉に戻ってしまった。

「は?」

 でも、聞こえてなかったらしい。

「な、なんでもねぇ、ですわよ」

「……ですわよって、くっくっく……」

 そんなに堪えないで思い切り笑えよ。


 くそ。

 言葉が直せな上に、このぎこちなさ……自分自身に、腹が立つ。

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