AKIRA


「へぇ、新しいマネージャーになったんだ、長田さん」

 もう、声だけでわかるよ。隣に何人の男がいようと、その中の陽の声だけははっきりと聞こえる。って……え?

「そうなの! 女子のだけど」

 嬉しそうに京子は、陽に向かって微笑んだ。

「おめでとう、ま、初めてだろうしアキに何でも教えてもらえばいいよ」

 陽も、ありえないくらいの笑顔だ。

「うん、そうする! 教えてね、アキ」

 その笑顔、俺にも向けてくんねぇかな……って、俺を見る目は一つじゃねぇ……亜美が、かなり睨んでるんですけど?

 俺、何かしたか?

「教えるって、え?」

「また聞いてなかった~、あのね、私、男子のマネージャーにはなれなかったの。でも女子になれたから、それはそれで嬉しいんだよ」

 嫌みのねぇ言葉が、嬉しいじゃねぇか、このやろう。

「ま、まぁ残念だった、ね」

「全然、残念じゃないよぉ! アキと部活でも一緒に居られるし嬉しいの」

 俺も、京子のように素直になれたら、こんなに苦しくもねぇんだろうな。

「よぉ! 聞いたよ長田さん! 残念だったねぇ、男子じゃなくて」

 また、いつものように啓介が教室にやってきた。

「うん、でもいいの」

「そう? 俺は長田さんに男子に来てもらいたかったのになぁ」

 なんて、啓介の奴、鼻の下伸ばしやがって。

「おい、服部、お前二組だろ、毎時間よく来るな」

 そう言ったのは、陽の友達で佐々木ってやつだ。

「いいじゃん別に、ダメって決まりないだろ。悪いか」

「悪かねぇけど」

 そう言って佐々木は、京子を見て「狼には気をつけて」と茶化した。

 京子は赤い頬を、更に赤らめ俯く。

「ばっ! 違うだろっ!」

 啓介は慌てて言い訳をする。でも、何気に啓介も赤くなってんじゃね? これは脈ありって捉えてもいいんじゃね?



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