AKIRA

「認めんな、ばか」

「……」

 何も言えない、叩かれても、姉貴には何一つ……わかってるんだよ、自分が情けないってのは。

「まぁ、私は何もしてあげられないけど、応援はしてあげる……でも、もたもたしてるとあんな綺麗な子、誰かに取られるわよ」

 姉貴はそう言って、ドアに向かう。その言葉に、俺の中に入り込んできたのは服部啓介だ。あいつも晶が好きだから……。

「あ、それと、亜美の事も早めにはっきりとしなさい。じゃなきゃ、あの子も前に進めないから」

 そう言い残してドアを閉めた。

 何もかも中途半端なのは俺だ。陽を傷つけないためにと思っていた行動が、他の誰かを傷つけている。どうしようもない男だな、俺……。

 俺の気持ちか……それはもうはっきりしてる。だから、後は砕けても打ち明ける方が、みんな進んでいけるんだろうな。

 俺は、閉められたカーテンを見据えた。

 この向こうに、いつもお前がいる。でも怖くて開ける事さえ出来ない。いつも、一番近くに居るのは俺なんだって自惚れがないとは言えない。





 だけど……本当は……。

 



 お前を傷つけるのが怖いんじゃなくて……本当は俺が傷つくのが怖いのかもしれない。


 俺を見てくれないんじゃないか、そう思ったら、怖くて堪らない。









~ キス、したのか?:陽side FIN  ~





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