AKIRA
 だから、俺はもっと女らしくするために努力を……努力を……。って、言ってる傍から「俺」だもんな。なかなか直らねぇよ。

 でも、今、またこの町に帰って来た。しかも、アイツの住んでるはずの町だ。きっと、アイツもいるはずなんだ。

 そして、きっとこの高校に……いるはずなんだ。

 いや、アイツと今更、どうこうなろうってんじゃねぇけど……ねぇけど……。

 でもさ、会いたいって思っても罰は当たらねぇよな。

 ふと、ガラス窓に映る自分の姿を見やる。くるくると髪先を指に巻いて……。

 髪も伸ばしてるし、少しは女に、見える、かな?

「おはよう」

 後ろから誰かが声をかけてきた。俺は少し緊張して振り向いて。

「あ、おっす……じゃねぇ、おはよう」

 そこにいたのは可愛い女の子だった。

 どこからどう見ても女の子してて、天然がかった柔らかそうな髪も、守ってやりたいって男心をくすぐるような笑顔も、俺にはない女の子の部分で。

「私、東雲(しののめ)中から来たんだけど、あんまりココ東雲中の子いなくて」

 はにかみながら女の子が言う。

「へぇ」

「あ、私、長田(おさだ)京子(きょうこ)、京子って呼んでね、よろしく」

「あ、お、あ、あた、しは……加藤、カトって呼ばれてた……」

「へぇ、カト……」

 そう言って、京子は机を見回し、俺の前が自分の席だと確認すると、すかさず座った。

 そして、俺の席に振り向き、机に両肘をつけて、俺を見つめる。


「どこ中?」

「え、あ、あた、し? えっと、宮西中」

「え~その中学、どこにあるの?」

「あ、ああ、県外だよ、そこの藤木二丁目に引っ越して来たばかりなんだ」

「そうなんだ、じゃぁ友達まだいないよね?」

「ああ、まぁな。でも、小学校は藤木南小だったんだ」

「じゃ、戻って来た感じ?」

「ああ」

「でも、南の子もあまりいなかった気がするなぁ」

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