誠-巡る時、幕末の鐘-



「……そう」




ニコッ




ミエのいきなりの笑顔にみんなは面食らってしまった。




「だそうよ、良かったわね、星鈴。そこにいるんでしょ? 入っておいで」


「…はい」




ミエに言われたためか、奏は素直に襖(フスマ)を開けて入ってきた。




「え!? 奏!!? 起きてたのか!?」




奏の登場に、みんなは慌てだした。


今まで気配が全くしなかったのだ。


奏は今にも泣きそうな顔をしている。


初めて見る表情に、みんな何と声をかけていいのか分からないでいた。




「よしよし、泣いていいよ。星鈴は…奏は私の家族だから」


「ミ、エ様。うっ…ふっ…うわぁぁぁん!!」




奏の涙腺がとうとう決壊した。




「奏は家族を失いました。次に私の兄の一人を。…もうこれ以上誰も失わせたくない。そう思って言った言葉です。今までの非礼お許しを」




ミエは奏の背を撫でながらみんなに詫びた。


その言葉に嘘偽りは見受けられなかった。



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