誠-巡る時、幕末の鐘-




 星鈴が腰に差している刀は、第三課の武器管理担当の刀匠によって鍛刀されたものだ。


 切れ味抜群の逸物で、(さや)や柄には桜の意匠が施されている。


 今持っている刀の中で、一番のお気に入りと言っていいだろう。



「こんな時間にこんな所で、何をしていた?」



 その愛刀を鞘から抜きはなちながら、(りん)とした声音でそう尋ねた。



「キヒッ?」



 いきなり現れた星鈴に、妖は軽く驚いているらしい。


 辛うじて形を保っている顔をまっすぐこちらに向けてきた。



「あんたは寝てな」



 問いかけた相手は、お前じゃない。



「ギエェェェェッ!」



 問答無用で振り下ろされた刀によって、妖は深手を負い、地面に勢いよく倒れこんだ。


 手らしき部分がピクピクと痙攣(けいれん)している。



(……一応、急所は外してあるから大丈夫でしょ。

 尋問までに治療すれば何の問題もないし。

 前にどこぞの戦闘狂(バカ)が連行してきた罪人に比べれば、断然マシだし)



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