誠-巡る時、幕末の鐘-



「いきなりどうしたんです? えらくご機嫌斜めですね」




山南は奏の甘えたような言葉に、迷うことなく不機嫌さを言い当てた。




「え?! 分かったのか、山南さん! 今ので!」


「すげぇー!」


「今のご機嫌な感じに聞こえるよなぁ?」




驚く永倉達に、山南は笑って誤魔化した。




「あのですね。今、京に流れている噂、知っています?」


「あぁ」


「えぇ」




二人は頷いた。




「京の人が困っているのを見るのは忍びないなぁと思いまして」




(本当よ? ちゃんとそう思ってる…よ?)




間が気になるのは気のせいだ。


そして、噂の片方の女の霊は自分であることも気にしない、気にしない。




「だがみんなで行くとなると屯所の警備が…」




近藤は難色を示していた。




フッ




(そんなこともあろうかと策は考えてありますよ。ちゃあんとね)




最初に肝試しをすると言い出した時には、もう万全の答えを全て用意していた。


用意周到な策士である。



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