誠-巡る時、幕末の鐘-

子猫の名付け親




――桜の木




「着いた」


「うわ〜! 綺麗だね〜」




以前見にきた時は満開だった桜が、今はもう散り始めている。




「あぁ。……食べるか? 響が栄太にと作ってくれた」


「ありがとう! 奏お姉ちゃんは?」


「私はいい。お腹すいてないから」


「そっか」




栄太に響お手製のおにぎりを渡し、桜の木陰に腰を下ろした。




「いただきま〜す」


「美味しいか?」


「うん!」




ご飯粒を顔につけ、満面の笑みを見せる栄太に、奏も満足そうだ。


響の作るご飯は何でも美味しい。


その響の作ったおにぎりを食べながらの花見はさぞかし気分がいいだろう。




「そうか。なら響に言ってやれ。喜ぶだろう」


「うん!」




響の恥ずかしそうにしながらも、花のように笑う笑顔を思い出していた。


暖かい春の午後である。



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